先週の土曜日、朝5時半に太田川の河川敷に出ました。
4月の広島市内はまだひんやりしていて、ウィンドブレーカーを着込んで走り出したら、川面から靄が立ち上がっていました。ほかに人はほとんどいなくて、ペダルを踏む音だけが静かに響いていました。「ああ、これのために早起きしてるんだな」と、毎回思います。
ロードバイクを始めて2年になります。きっかけは職場の先輩に誘われたことだったのですが、正直最初の3ヶ月はしんどかったです。週末に宮島街道を走ろうとして、廿日市あたりで脚が売り切れて帰れなくなりかけたこともありました。妻に迎えを頼む羽目になって、「本当に続けるの?」と苦笑いされたのは今でも忘れられません。
あれから2年。今は週に3回、朝6時から30分だけ走るペースに落ち着いています。
脳が変わっていく感覚
18年間、作業療法士として脳卒中や整形疾患の患者さんを診てきました。「運動が脳にいい」という話は頭で理解していたし、患者さんにも伝えてきました。でも自分が体験するまで、ここまでリアルに感じるとは思っていませんでした。
ライドを習慣化して半年が過ぎた頃、職場でちょっとした変化がありました。カルテを書くとき、以前は途中でふと集中が途切れることがあったんですよね。40歳を過ぎてから「なんか頭が重い」と感じることも増えていて、加齢のせいだと諦めかけていました。それがライドを続けていたら、そういう感覚がじわじわ薄れていきました。
なぜそうなるのかはリハビリの知識があるから少しわかります。中強度の有酸素運動を継続すると、記憶と学習を担う海馬の体積が維持されやすくなります。40代は放っておくと海馬が少しずつ萎縮する時期で、ロードバイクはその進行にブレーキをかける効果があります。
それに、自転車に乗っているあいだは思った以上に脳を使っています。太田川沿いの河川敷でも、路面の状態を読みながら、右折してくる自転車に気を配りながら、向かい風の変化に体を合わせます。リハビリで「デュアルタスク訓練」と呼ぶ、複数の情報を同時処理する練習と同じ原理です。毎朝30分これをやっているのですから、脳への刺激はそれなりにあるんだと思います。
姿勢の変化は、妻が先に気づいた
始めて8ヶ月くらい経ったとき、妻が「なんか最近、座ってるときの姿勢が変わったね」と言いました。自分ではあまり意識していなかったのですが、言われてみると確かに背中の張りが減っていました。
ロードバイクに正しいフォームで乗り続けると、背中の深層筋——脊柱起立筋や多裂筋——が継続的に働きます。デスクワークで固まっていた胸椎まわりが少しずつほぐれていったようでした。
ただ、最初のうちはフォームが崩れていて膝の外側が痛くなりました。2ヶ月ほど我慢して乗り続けたのですが、ある日広島市内の専門店でポジションを見てもらったら、サドルが1cmほど低すぎると指摘されました。調整したらすぐに痛みが消えました。変なところで我慢してしまっていたなと思います。
関節への負担という面では、ランニングとは全然違います。変形性膝関節症の患者さんにエルゴメーターを勧めることがあるくらい、自転車は膝に優しいんですよね。42歳の膝には、ちょうどいいと感じています。
30分・週3回でも、続けると変わる
3人の子どもを育てながら趣味に時間をとるのは、本当に綱渡りです。朝6時に出て6時半に帰るのが今のルーティンで、上の子が起きてくる前に戻れるギリギリのラインでした。
それでも続けた結果、半年でウエストが4cm細くなって、去年の健診で中性脂肪の値が正常域に戻りました。週3回×30分という控えめなペースでも、体はちゃんと反応してくれるものだと思います。
ライド後のケアは最初よくサボっていたのですが、翌日の疲れの残り方が全然違うので今は欠かさないようにしています。
- 帰ってすぐ10分ストレッチ(股関節と胸椎まわりを中心に)
- プロテイン入りの牛乳をコップ1杯
- できるだけ7時間睡眠を確保する
シンプルですが、これだけでかなり違いました。
今年の春、太田川放水路から尾道まで走ってみたい
先日、職場の後輩が「ウォーキング始めたいけど続かない」と相談してきました。「だったら自転車はどうですか」と答えたら、「転ぶのが怖い」と言われました。気持ちはわかります。私も廿日市で力尽きた日は、帰り道ずっとそんな気持ちでしたから。
でも乗り慣れると、太田川放水路の直線を朝の光の中で走るあの感覚は、なかなか他では味わえないんですよね。今年の目標は、呉から尾道まで海沿いを一日かけて走ることです。3人の子どもに「パパめっちゃ遠くまで行ってくるわ」と言ったら、末っ子に「なんで?」と返されました。
なんで、か。うまく答えられませんでしたが、たぶんそれが一番正直な理由なんだと思います。

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